知的財産法 後期第7回
https://gyazo.com/45903d9e1773a56e835e11aa4639e841
特許庁による審査基準の説明
設問:本日のレポート課題
Aさんは、清涼飲料水メーカーのデザイン部に所属している。下記のようなボトルのデザインを開発したとろ、商品企画部から、これと同じデザインコンセプトのボトルやマグカップのデザインもしてくれるように依頼された。そこで、胴の太い花瓶、ボトルの下半身部分のデザインに持ち手をつけたマグカップを試作した。Aさんは、どのような意匠登録出願をしたら良いだろうか?
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A 飲料水用ボトル
B 花瓶
C マグカップ
意匠の出願形式
意匠の創作活動は、デザインコンセプトレベルからその具体化に至るまで幅広い。
一方、意匠法は、「物品の意匠」として意匠の創作結果を保護する。
ここで、物品性という「枠」がはめられていることに注意しなければならない。
すなわち、デザインコンセプトという広い範囲では、意匠を保護していないということである。
物品性を要求するがゆえ、意匠登録出願は、物品を指定して(意匠法6条)、意匠ごとに出願しなければならない(意匠法7条)、としている。
(意匠登録出願)
第六条 意匠登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書に意匠登録を受けようとする意匠を記載した図面を添付して特許庁長官に提出しなければならない。
一 意匠登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 意匠の創作をした者の氏名及び住所又は居所
三 意匠に係る物品又は意匠に係る建築物若しくは画像の用途
(一意匠一出願)
第七条 意匠登録出願は、経済産業省令で定めるところにより、意匠ごとにしなければならない。
意匠の創作者側としては、可能な限りデザインを幅広く保護して欲しいとの欲求がある。
物品性を前提に、どのような保護を求めることが最適なのかを考え、出願形式を選ぶこととなる。
意匠の出願形式の種類
意匠登録を受けようとする意匠を記載した図面を用意する。
形状のみの意匠・色彩のみの意匠?
第二条 この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。次条第二項、第三十七条第二項、第三十八条第七号及び第八号、第四十四条の三第二項第六号並びに第五十五条第二項第六号を除き、以下同じ。)であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。 2019年改正法, 2020年改正で「第八条を除き、」を削除
物品全体の意匠
物品の部分の意匠・・部分意匠(2条①かっこ書)意匠とは・・物品(物品の部分を含む。第八条を除き、以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合
2020年改正で「第八条を除き、」を削除して、組物の意匠の部分意匠登録も可能となった。
自動車のフロントグリルの新しいデザインを開発したとき
出願形式は3つのパターンがある
1)部品として出願
https://gyazo.com/ec3f190457345b7ce25c6057b85f7ed1
2)当該フロントグリルの部分を有する自動車の意匠として出願(部分意匠)
https://gyazo.com/dce2912b20cf1f90b2cd5bbeee2708b1
3)当該フロントグリルを有する自動車自体の意匠として出願(完成品の意匠)
上記の2)の例で、破線部分をすべて実線に置き換えたもの
さて、どのようなフロントグリルデザインの登録が保護として有効でしょうか?
(意匠権の効力)
第二十三条 意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する。
2)動的意匠(6条④)
4 意匠に係る物品の形状、模様若しくは色彩、建築物の形状、模様若しくは色彩又は画像がその物品、建築物又は画像の有する機能に基づいて変化する場合において、その変化の前後にわたるその物品の形状等、建築物の形状等又は画像について意匠登録を受けようとするときは、その旨及びその物品、建築物又は画像の当該機能の説明を願書に記載しなければならない。
3)組物の意匠(8条)
同時に使用される二以上の物品であつて経済産業省令で定めるもの(以下「組物」という。)を構成する物品に係る意匠は、組物全体として統一があるときは、一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる。
3-2) 2019年改正法(内装の意匠)
第八条の二 店舗、事務所その他の施設の内部の設備及び装飾(以下「内装」という。)を構成する物品、建築物又は画像に係る意匠は、内装全体として統一的な美感を起こさせるときは、一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる。
4)関連意匠(10条)
自己の意匠登録出願に係る意匠等(「本意匠」)に類似する意匠
5)秘密意匠(14条)
意匠登録出願人は、意匠権の設定の登録の日から三年以内の期間を指定して、その期間その意匠を秘密にすることを請求することができる。
********************************
通常の出願
意匠の特定
形状のみ?
模様のみ?
色彩のみ?
物品の特定・・・物品の区分は廃止されたが、物品を特定する必要があるのは従前通り。
2019年改正法
(一意匠一出願)
第七条 意匠登録出願は、経済産業省令で定めるところにより、意匠ごとにしなければならない。
旧法
(一意匠一出願)
第七条 意匠登録出願は、経済産業省令で定める物品の区分により意匠ごとにしなければならない。
この改正とともに、複数意匠一括出願が導入された。
特許庁:物品区分表の廃止に伴う運用変更について(案)
動的意匠(6条④)
4 意匠に係る物品の形状、模様若しくは色彩、建築物の形状、模様若しくは色彩又は画像がその物品、建築物又は画像の有する機能に基づいて変化する場合において、その変化の前後にわたるその物品の形状等、建築物の形状等又は画像について意匠登録を受けようとするときは、その旨及びその物品、建築物又は画像の当該機能の説明を願書に記載しなければならない。
組物の意匠(8条)
(組物の意匠)
第八条 同時に使用される二以上の物品、建築物又は画像であつて経済産業省令で定めるもの(以下「組物」という。)を構成する物品、建築物又は画像に係る意匠は、組物全体として統一があるときは、一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる
https://gyazo.com/36d2128bafc0701d2a89e25ba1962fe0
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関連意匠
2019年改正法
(関連意匠)
第十条 意匠登録出願人は、
自己の意匠登録出願に係る意匠 又は
自己の登録意匠のうちから選択した一の意匠
(以下「本意匠」という。)に類似する意匠
(以下「関連意匠」という。)については、
当該関連意匠の意匠登録出願の日
(第十五条第一項において準用する特許法第四十三条第一項、第四十三条の二第
一項又は第四十三条の三第一項若しくは第二項の規定による優先権の主張を伴う
意匠登録出願にあつては、最初の出願若しくは千九百年十二月十四日にブラッセ
ルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にヘーグ
で、千九百三十四年六月二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一日にリスボ
ンで及び千九百六十七年七月十四日にストックホルムで改正された工業所有権の保
護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約第四条C(4)の規定により最初
の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出
願の日。以下この項において同じ。)
がその本意匠の意匠登録出願の日以後であつて、
当該本意匠の意匠登録出願の日から十年を経過する日前である場合に限り、
第九条第一項又は第二項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができる。
ただし、当該関連意匠の意匠権の設定の登録の際に、その本意匠の意匠権が第四十四条
第四項の規定により消滅しているとき、無効にすべき旨の審決が確定しているとき、
又は放棄されているときは、この限りでない。
関連意匠制度導入の趣旨
より
「改正前の意匠法における類似意匠制度は、自己の登録意匠にのみ類似する意
匠(一つのデザイン・コンセプトに関連するバリエーションのデザイン、改良
を加えたデザイン)を登録することにより、本意匠の類似範囲を明確にすると
ともに、もとの意匠権の保護範囲を拡張することによって保護の強化を図った
ものとされていた。しかしながら、実際の意匠権侵害訴訟においては、類似意
匠に基づく侵害の成否は訴訟の対象とならずに、専ら本意匠の意匠権の侵害の
成否としてのみ訴訟が進められることとなり、類似意匠の意匠権独自の効力範
囲についてほとんど認められなかった。
このような状況に対して、一つのデザイン・コンセプトに係る同時に創作さ
れたバリエーションのデザインは、それぞれが同等に保護されるべき創作的価
値を有するデザインであることから、類似する意匠であっても本意匠と同等に
保護してほしいという要望、あるいは類似意匠の意匠権によっても別個に侵害
訴訟を提起することができるようにしてほしいとの要望が、産業界から強く提
起された。
このため、同等の価値を有するものとして創作された意匠を広く保護するこ
とができる体系の実現を図るため、迅速な権利形成の達成についても考慮しな
がら、類似意匠の権利が本意匠に合体する旨の規定を見直して、同一人が同日
に出願した類似する意匠については、それぞれが独自の効力を有する意匠とし
て登録を受けることを認め、意匠権の効力の及ぶ範囲について類似する範囲が
相互に重なりあっている関連意匠制度を新たに創設した。」
2019年改正法による関連意匠制度の拡充
意匠法の改正に伴う今後の意匠審査基準の改訂について(案)
令和元年 7 月 24 日 第 15 回意匠審査基準ワーキンググループ
資料2
p3 より
「関連意匠制度の拡充(意匠法第 10 条)
関連意匠制度とは、一つのデザインコンセプトに基づく複数のデザインバリエ
ーションを保護するものであり、自己の意匠登録出願のうちから選択した一つの
意匠を本意匠として登録するとともに、これに類似する意匠についても、関連意
匠として登録することができる制度である。現行法上、登録可能な関連意匠の出
願期間は、本意匠が掲載された意匠公報の発行日前までとしており、また、累次
の無限連鎖を回避するために、関連意匠にのみ類似する意匠については、関連意
匠登録が認められていない。
近年、世界中の企業がデザインによる競争力の強化を図る中、自社製品に共通
の一貫したデザインコンセプトを用いることで独自の世界観を築き上げ、製品の
付加価値を高める動きが加速している。こうした一貫したデザインコンセプトに
基づき、市場動向等を踏まえて製品等のデザインを長期的に進化させていくデザ
イン戦略に、関連意匠制度を対応させるべく、今般の改正で、登録可能な関連意
匠の出願期間を「本意匠の意匠登録出願の日から 10 年を経過する日前」にまで
延長するとともに(第 10 条第 1 項)、関連意匠に連鎖して類似する関連意匠につ
いても、関連意匠登録を認めることとしている(同条新第 4 項)。」
関連意匠に連鎖して類似する関連意匠
10条4 第一項の規定により意匠登録を受ける関連意匠にのみ類似する意匠に
ついては、当該関連意匠を本意匠とみなして、同項の規定により意匠登録を受
けることができるものとする。当該意匠登録を受けることができるものとされ
た関連意匠にのみ類似する意匠及び当該関連意匠に連鎖する段階的な関連意匠
にのみ類似する意匠についても、同様とする。
旧法では・・・関連の関連は不可
https://gyazo.com/3de712ab8ccbe4858c396dc7fbc877ad
関連意匠と専用実施権
10条6項 本意匠の意匠権について専用実施権が設定されているときは、
その本意匠に係る関連意匠については、第一項及び第四項の規定にかか
わらず、意匠登録を受けることができない。
理由は、27条1項に反する関連意匠が増えるおそれがあるから。
(専用実施権)
第二十七条 意匠権者は、その意匠権について専用実施権を設定する
ことができる。ただし、基礎意匠又は関連意匠の意匠権についての専
用実施権は、基礎意匠及び全ての関連意匠の意匠権について、同一の
者に対して同時に設定する場合に限り、設定することができる。
秘密意匠
第十四条 意匠登録出願人は、意匠権の設定の登録の日から三年以内の期間を指定して、その期間その意匠を秘密にすることを請求することができる。
2 前項の規定による請求をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した書面を意匠登録出願と同時に、又は第四十二条第一項の規定による第一年分の登録料の納付と同時に特許庁長官に提出しなければならない。
一 意匠登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 秘密にすることを請求する期間
3 意匠登録出願人又は意匠権者は、第一項の規定により秘密にすることを請求した期間を延長し又は短縮することを請求することができる。
4 特許庁長官は、次の各号の一に該当するときは、第一項の規定により秘密にすることを請求した意匠を意匠権者以外の者に示さなければならない。
一 意匠権者の承諾を得たとき。
二 その意匠又はその意匠と同一若しくは類似の意匠に関する審査、審判、再審又は訴訟の当事者又は参加人から請求があつたとき。
三 裁判所から請求があつたとき。
四 利害関係人が意匠権者の氏名又は名称及び登録番号を記載した書面その他経済産業省令で定める書面を特許庁長官に提出して請求したとき。
秘密意匠制度の趣旨
秘密意匠制度は、意匠登録出願人が、意匠権の設定の登録の日から3年以内 の期間を指定して、その期間その意匠を秘密にすることができる制度。
先願により意匠権を確保するものの、直ちに当該意匠の実施を行わない場合に意匠公報が発行されることによる 第三者の模倣を防止しようとする趣旨。
従来は、秘密意匠の請求をしようとする者は、意匠登録出願と同時に請求の書面を特許庁に提出しな ければならなかった。
意匠審査の迅速化が実現したことに伴い、 出願のタイミングによっては、商品の販売前にもかかわらず、意匠公報の発行によって意匠が公開されることがあり、商品の広告・販売戦略等に支障が出る 場合が生じている。 審査が出願時の予想よりも早期に終了した結果秘密意匠の請求の必要が生じたような事態には対処できなかった。こうしたことから、審査が終了した後にも秘密意匠の請求を可能とした。
そこで、出願と同時にする場合に加え、意匠登録の第1年分の登録料の納付と同時にする場合も認めることとする。
部分意匠について
物品の部分についての意匠(2条1項かっこ書)
意匠とは・・物品(物品の部分を含む。第八条を除き、以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合
部品の意匠との関係
部品は完成品としての物品の部分の意匠としても、部品を一つの物品とし、その意匠として出願してもよい
離れた部分の意匠・・形態的・機能的一体性を有すれば離れた部分を一つの部分意匠として特定可能
模様も可能
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部分意匠制度の趣旨
従来、意匠法第2条の「物品」とは、独立した製品として流通するものと解されていたことから、独立した製品として取引の対象とされず、流通をしない物品の部分に係る意匠は、意匠法の保護対象とはされていなかった。
そのため、一つの意匠に独創的で特徴ある創作部分が複数箇所含まれている場合、物品全体としての意匠権しか取得できないため、それらの一部分が模倣されていても、意匠全体としての模倣が回避されていれば当該意匠の意匠権の効力は及ばない状況にあった。
そこで、これらの点を踏まえ、平成10年に意匠法を改正して、意匠法第2条の意匠を構成する「物品」の定義に「物品の部分」が含まれることを明らかにし、物品の部分に係る形状等について独創性が高く特徴ある創作をした場合は、当該創作を部分意匠として保護することした。
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以下の点に関して、願書の記載及び願書に添付した図面等を総合的に判断して行う。
(1)部分意匠の意匠に係る物品
当該部分意匠の意匠に係る物品の使用の目的、使用の状態等に基づき用途及び機能を認定する。
(2)「意匠登録を受けようとする部分」の用途及び機能
「意匠登録を受けようとする部分」の用途及び機能は、前記認定した部分意匠の意匠に係る物品が有する用途及び機能に基づいて認定する。
(3)「意匠登録を受けようとする部分」の位置、大きさ、範囲
位置とは、部分意匠の意匠に係る物品全体の形態に対する当該「意匠登録を受けようとする部分」の相対的な位置関係をいう。
大きさとは、主として「意匠登録を受けようとする部分」の絶対的な大きさ をいう。なお、大きさについては、絶対的な一の大きさ(寸法)を認定するも のではなく、当該意匠の属する分野における常識的な大きさの範囲を認定する ものである。また、
範囲とは、主として部分意匠の意匠に係る物品全体の形態に対する当 該「意匠登録を受けようとする部分」の相対的な大きさ(面積比)をいう。
(4)「意匠登録を受けようとする部分」の形態
1「意匠登録を受けようとする部分」を認定する際には、意匠登録出願人が 願書の「意匠の説明」の欄に記載した特定方法により行う。
また、「意匠登録を受けようとする部分」の認定の基礎となる図面は、原則、一組の図面であるが、願書の「意匠の説明」の欄に、例えば、「断面図 を含めて『意匠登録を受けようとする部分』を特定している。」旨記載され ているときには、断面図をも含めて「意匠登録を受けようとする部分」を認定する。
2「意匠登録を受けようとする部分」の形態の認定 「意匠登録を受けようとする部分」の形態は、全体意匠と同様に、一組の図面及び断面図、斜視図等その他必要な図及び使用の状態を示した図等その他の参考図に基づいて認定する。
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意匠法第3条第1項第3号公知の意匠と部分意匠との類否判断
意匠審査基準2.2.2.1 意匠の類否判断の観点
審査官は、次の(ア)から(キ)の観点により、類否判断を行う。
(ア) 対比する両意匠の意匠に係る物品等の用途及び機能の認定及び類否判断
(イ) 物品等の部分について意匠登録を受けようとする意匠の場合、当該部分における用途及び機能の共通点及び差異点の認定
(ウ) 物品等の部分について意匠登録を受けようとする意匠の場合、当該部分の位置、大 きさ、範囲の共通点及び差異点の認定
(エ) 対比する両意匠の形状等の認定
(オ) 対比する両意匠の形状等の共通点及び差異点の認定
(カ) 対比する両意匠の形状等の共通点及び差異点の個別評価
(キ) 総合的な類否判断
2.2.2.2 対比する両意匠の意匠に係る物品等の用途及び機能の認定及び類否判断
対比する両意匠の意匠に係る物品等の使用の目的、使用の状態等に基づき、意匠に係る物 品等の用途及び機能を認定する。
意匠の類似は、対比する意匠同士の意匠に係る物品等の用途及び機能が同一又は類似で あることを前提とする。
物品等の部分について意匠登録を受けようとする意匠の場合も同様であり、例えば、カメラのグ リップ部分について意匠登録を受けようとする意匠が意匠登録出願された場合、権利の客体とな る意匠に係る物品は、当該グリップ部分を含む「カメラ」であることから、新規性の判断の基礎とな る資料は、「カメラ」及びそれに類似する物品等に係る意匠となる。
上記の「意匠に係る物品等の用途及び機能が同一又は類似であること」の判断は、物品等の 詳細な用途及び機能を比較した上でその類否を決するまでの必要はなく、具体的な物品等に表 された形状等の価値を評価する範囲において、用途(使用目的、使用状態等)及び機能に共 通性があれば物品等の用途及び機能に類似性があると判断するに十分である。
意匠に係る物品等の用途(使用目的、使用状態等)及び機能に共通性がない場合には、 意匠は類似しない。
2.2.2.3 物品等の部分について意匠登録を受けようとする意匠の場合の、当該部分における 用途及び機能の共通点及び差異点の認定
出願された意匠が、物品等の部分について意匠登録を受けようとする意匠である場合は、「意 匠登録を受けようとする部分」と公知意匠における「意匠登録を受けようとする部分」に相当する 部分のそれぞれの用途及び機能について共通点及び差異点を認定する。
2.2.2.4 物品等の部分について意匠登録を受けようとする意匠の場合の、当該部分の位置、大きさ、範囲の共通点及び差異点の認定
出願された意匠が、物品等の部分について意匠登録を受けようとする意匠である場合は、「意匠登録を受けようとする部分」の当該物品等全体の形状等の中での位置、大きさ、範囲と、公 知意匠における「意匠登録を受けようとする部分」に相当する部分の当該物品等全体の形状等 の中での位置、大きさ、範囲について共通点及び差異点を認定する。
なお、位置、大きさ、範囲は、当該意匠の属する分野においてありふれた範囲内のものであれ ば、ほとんど影響を与えない。
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部分意匠と破線部分
知財高裁平成18年(行ケ)第10317号 平成19年1月31日判決
部分意匠制度は,破線で示された物品全体の形態について,同一 又は類似の物品の意匠と異なるところがあっても,部分意匠に係る部分の意 匠と同一又は類似の場合に,登録を受けた部分意匠を保護しようとするものなのであるから,破線で示された部分の形状等が,部分意匠の認定において, 意匠を構成するものとして,直接問題とされるものではない。 しかし,物品全体の意匠は,「物品」の形状等の外観に関するものであり (意匠法2条1項),一定の機能及び用途を有する「物品」を離れての意匠はあり得ないところ,「物品の部分」の形状等の外観に関する部分意匠においても同様であると解されるから,部分意匠においては,部分意匠に係る物品とともに,物品の有する機能及び用途との関係において,意匠登録を受けようとする部分がどのような機能及び用途を有するものであるかが確定されなければならない。そして,そのように意匠登録を受けようとする部分の機能及び用途を確定するに当たっては,破線によって具体的に示された形状等を参酌して定めるほかはない。
また,意匠登録を受けようとする部分が,物品全体の形態との関係において,どこに位置し,どのような大きさを有し, 物品全体に対しどのような割合を示す大きさであるか(以下,これらの位置, 大きさ,範囲を単に「位置等」ともいう。)は,後記2( )のとおり,意匠登録を受けようとする部分の形状等と並んで部分意匠の類否判断に対して影響を及ぼすものであるといえるところ,そのような位置等は,破線によって具体的に示された形状等を参酌して定めるほかはない。部分意匠は,物品の部分であって,意匠登録を受けようとする部分だけで完結するものではなく,破線によって示された形状等は,それ自体は意匠を構成するものではないが, 意匠登録を受けようとする部分がどのような用途及び機能を有するといえるものであるかを定めるとともに,その位置等を事実上画する機能を有するものである。 そして,部分意匠の性質上,破線によって具体的に示される形状等は,意匠登録を受けようとする部分を表すため,当該物品におけるありふれた形状等を示す以上の意味がない場合もあれば,当該物品における特定の形状等を 示して,その特定の形状等の下における意匠について,意匠登録を受けよう としている場合もあり,部分意匠において,意匠登録を受けようとする部分 の位置等については,願書及びその添付図面等の記載並びに意匠登録を受け ようとする部分の性質等を総合的に考慮して決すべきである。
演習:部分意匠の類否判断
https://gyazo.com/b050695fd1aabe07f654276e1805cff1
https://gyazo.com/8ca4df66e554e4a4d6c9f9658cdb3317
参考情報
デザイン戦略と知的財産権 事例集
部分意匠の保護に関する研究
「部分意匠」に関するQ&A
部分意匠の登録事例研究
部分意匠の関連意匠登録事例集について(特許庁)